シルビオ・ゲゼル入門ー廣田祐介 より抜粋
同じ価値(たとえば五万円)のモノでも、お弁当やお米や本などの商品を持っている人と、現金を持っている人では、全然立場が違うわけです。商品を持っている人の場合にはその商品をできるだけ早く売りさばいてしまう必要がありますが、お金は手元にずっと置いておいても価値が減らないどころか、銀行に預けておくとむしろ価値が増えてゆきます。このため、お金を持っていると、商品を持っているよりも非常に有利な立場に立つことができるわけです。しかし、ここで根本的な矛盾があることがわかります。お金が交換手段として流通し、AさんからBさん、BさんからCさんの手に渡り続けている場合には、誰もお金を貯蓄手段としては使うことができません。また逆に誰もがお金をしまい込んで貯蓄手段として使っている場合、お金が全然流通しなくなってしまいます。交換手段としてのお金と、貯蓄手段としてのお金は両立しないのです。シルビオ・ゲゼルは「交換手段と貯蓄手段との実行力のある完全な分離を私は要求する」「お金を交換手段として改良するためには、商品同様お金を劣化させなければならない」と主張しています。