• 本を読んで再考する

理想と現実 E.H.カー著 より抜粋

政治を考察するもののまず第一の仕事は、ユートピアンの殿堂が実はうつろな構築物であるということをリアリストからの批判によって明らかにすることである。まがいものが打ち壊されて初めて、代わりに一層堅固な建造物を立ち上げる希望もまたうまれてくるのである。しかし結局のところ、われわれは純粋なリアリズムのなかに安息の地を見出すことはできない。なぜならリアリズムは、論理的には圧倒的な力をもっているとはいえ、思考の追求にさえ必要な行動の活力をわれわれに与えてはくれないからである。確かにリアリズムはーもしわれわれがリアリズム独自の武器でもってリアリズムを攻撃するならー他のあらゆる思考方法と同様、実際にはそれ自体条件付きの思想であることがしばしば明らかになるのである。

我々は、ユートピアンとリアリストの不毛な対立を形成し続けるのか。この言論空間の中で、両者を補完的な関係にすることは可能なのだろうか。


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