• 本を読んで再考する

ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性 

セス・スティーヴンズ ダヴィドウィッツ著から引用

ペンシルバニア州立大学ウォートン校のジョナ・バーガーとキャサリン・L・ミルクマンによる共同研究を紐解いてみよう。彼らは人々にシェアされる物語について調べた。「ニューヨーク・タイムズ」の記事のうち、幸せな話と悲しい話のどちらがメールでシェアされやすいかを調べたのだ。まず3カ月分の同紙の全記事をダウンロードし、感情分析によって記事ごとの気分を判定した。幸福と判定された記事には「ニューヨークに恋した天真爛漫な新来者」とか「トニー賞のフィランソロフィー」などがあった。「ネット上のうわさを苦に韓国人女優が自殺」とか「ドイツ発 赤ちゃんホッキョクグマ飼育員死亡」などは、もちろん悲しい記事に分類された。さらに掲載位置についても調べた。-トップページに掲載されたのか、右上部か左上部か?また報じられた時間についても調べた-火曜日の深夜か、それとも月曜日の朝か?そして同様の場所に同様な時間帯に掲載された、幸せな記事と悲しい記事がどちらが多くメールでシェアされたのかを調べた。結果、多くシェアされていたのは幸せな記事のほうだった。両研究者らは、「記事は明るいほどバイラルに広まりやすい」と結論している。この結論はジャーナリズム絡みの通説-人々は暴力的で悲劇的な物語に惹かれる-と正反対である。ニュースメディアが悲惨な記事を量産しているのは事実かもしれない。「流血物は読まれる」という報道室の格言もある。だがこの研究者らの分析によると、人々は実はもっと明るい物語を求めているのかもしれない。「笑える記事はシェアされる」という新格言を示唆しているのかもしれないのだ。


メディアは、その時代の空気を形成する。知識人は悲観的傾向を持つとか、その民族が好みやすい音楽や物語の型があるとか。様々なバイアスがあるのだろう。震災の被災地で一番被災にあった場所をメディアは選んで報道するという話を聞いたこともある。本当かわからないが。我々は限られた視界の中で、本質を見極め、嫉妬心を煽らない形で、小さな幸福の連鎖を形成することは可能なのだろうか。


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