• 本を読んで再考する

阿部孤柳 著から引用

日本料理の原則は、素材の持ち味を引き出すことで、素材そのものの味を殺すような味付けや調理はしません。日本人は、真っ白い豆腐にしょうゆをちょっとつけて食べ、「この豆腐は、いい大豆を使っているからおいしいねぇ」といって豆腐の味を「単味」で味わいます。白い豆腐や味付けされていない白いご飯をおいしいといえるのは日本人だけが持つ味覚です。素材そのものを単味で味わう能力を日本人は持っているのです。中国人は、単味では決してうまいとはいいません。豆腐にしても麻婆豆腐のようにひき肉やねぎ、豆板醤、山椒の実などを加えて片栗粉でとろみをつけて食べるほうが中国人は好きです。アメリカでも豆腐は健康食ブームで流行りの食べものになっていますが、アメリカ人はまるでヨーグルトのように、豆腐に甘いはちみつやジャムをかけて食べます。外国の料理は、このように外からの味を借りて彼らの嗜好に合わせて「うまく」するものが多いです。しかし、まずい豆腐なら仕方ありませんが、日本人はうまい豆腐を味がわからなくなるようにして食べるようなもったいない食べ方はしてきませんでした。


科学技術自体に善悪は無い。それを善にも悪にも使うのは、人間次第であるという意見がある。ただ本当に我々は、科学技術によって人本来の良さを引き出せているのだろうか。


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